抗生剤のミツバチへの利用

ミツバチ

前回は抗生剤・抗生物質に対するミツバチへの利用につき少しだけ話したが、これについてもうちょっとだけ書いてみたい。
多くのハチミツ産出国での抗生剤・抗生物質の使用は、要開発国・先進諸国に関わらず大方は薬剤の使用を規制してない。ニュージーランドは数少ない使用禁止国の一つである。この事を書くと長くなってしまうが概略を言うと、ニュージーランドは大古の時代、海底に有った Zealandia と呼ばれる大陸の一部が浮上してできたので、他国のように動植物の多様性が非常に少ない。このようなニュージーランドの自然環境下において、動植物の海外からの持ち込みは第一次産業省(旧農務省)により厳しく規制されている。
養蜂における薬剤、特に抗生剤・抗生物質の使用は厳禁である。養蜂に関していえば、感染症がでたらそれを治す方法がないため結局は即焼却処分となり、病気が発生した地域の詳細について報告書を提出しなければならない。もし薬剤の使用が許可されていたら、こうした病気が出ても治療によって復活できる可能性がある。しかし私は現在当局が行っている規制は正しいのではないかと思う。感染症については勿論、薬剤利用によって救済は可能である。しかしながら薬剤を頼りにすると(これは養蜂以外に他の職種においても同様であるが)どのような生き物でも種の生存を維持するための進化があり、やがてはこれらの薬剤に感受性のない微生物の出現を避けることができない。人間で言えば今やどこの医療機関にも寄生する薬剤耐性の院内感染菌が良い例だろう。これは抗菌薬の乱用によって現れる。
アメリカなどの養蜂は越冬後の春の仕事のひとつとしてまず、抗生剤・抗生物質を餌に与えることから始まると言う。こうすれば感染症のリスクを大幅に軽減できるからだ。この事は日本の養蜂も同じで、抗生剤・抗生物質使用上の規制はない。昨今、中国をはじめ、東南アジア諸国などの食品に対する問題が多く、一般消費者の概念として国産品は安全だと言う考え方がある。蜂産品に限って言えばこれは大きな間違いである。私のところから本社向けにハチミツなどが輸出されるが、輸入通関時に抗生剤・抗生物質の検査が実施される。海外からの食品は皆同じで、厚労省検疫所の定める残留抗生物質等の数値が規定以上検出されると輸入が承認されない。ところが日本国内で生産されるハチミツはこの規制ががないので輸入品と比べリスクが大きくなる。一般的に国産だから安全と言われるのは単なる俗説にすぎないのかもしれないし、これは他の食品ついても同じことだと思っている。

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