自然への畏敬の念

2017.09.25

牧場

長く日本を離れ外国で暮らしていると、日本の良さも悪さも良く分かるようになる。こちらはどこへ行っても、ちょっと町から離れれば広大な牧場地帯が広がっている。牛や羊あるいは、鹿の放牧が普通に見られ、家畜たちのストレスもなくのんびりと草を食べている。
ニュージーランドの面積は、北海道を除いた日本のそれと同じで人口は400万人少々。これは横浜市の人口より少し多い程度だ。山岳地帯を除きその多くが牧場である。ほとんどの自然林はかつてイギリスの植民者達によって伐採され、牧草地の単純な景色と化したのだ。当地を訪れたことのある人は、この牧草地を見て国家的財産だと思うだろう。

しかし、国土の7割を自然林が占めるといわれる日本の自然の豊かさは世界でも珍しく、実に貴重である。そして世界的にも魅力ある着物の美しさは、日本の紅葉から由来しているのではないかとも思うのだ。いわゆる鎮守の杜などという、神社を囲むように必ず存在している森林。そこには山河の神々が住み、村人を守って下さっているという様な信仰に厚い文化は、少なくともここニュージーランドには存在しないのである。
こうした文化の違いは、私の様な蜂飼いにとっても困った事となっており、マヌカ樹木の森林減少に至っては極めて深刻な問題なのだ。ところがこれに反発する人たちもいる。それが先住民族のマオリ族だ。パシフィックの島々から当地へ9世紀ごろに来たといわれているが、正確には不明。彼らはとりわけ自然への畏敬の念が大きく様々な神を信じている。日本と同じく、自然に対しての共通する考え方があり、辛うじて自然林保護への運動をしているのが救いとなっている。
それにしてもあれだけ大きな原発事故が起きてもまだ続ける国民性とは何なのだろう。ミツバチから見れば日本人はとんでもなく不可解な人種なのかもしれない。

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