雨天が続くとミツバチたちは

オーストラリアとニュージーランドの間にタスマンと呼ばれる海峡がある。オーストラリア大陸で発生した気団が東に進みこの海峡を渡ってニュージーランドに達する。この海峡を渡ることによって気団が複雑化し、天気予報が中々当たらない。気象予報士の泣き所である。
この処、最も遠い養蜂場が雨続きで閉口していたが、やっと大きな高気圧の気団が来て良い天気になったので心配しながら様子を見に行った。彼女(ミツバチは女系集団)たちは元気だった! 久しぶりの青空を元気よく飛び廻っていたのでほっとした。早速巣箱内の内検に入るが、予想していた通り前回の内検時に比べて貯蜜が大幅に減っていた。雨天が続くと働き蜂は採蜜ができず花蜜を運んで来られないので、巣箱内の貯蜜を食料として消費することになる。近年は過去に無かった異常気象による長雨や極端な大雨が当地でも普通にあるため、これは私たちにとっても大きな打撃となる。

食糧難となったミツバチは近くの巣箱に盗蜜、つまり他の巣箱へ蜜を盗みに入る。群棲の弱い巣箱ほどこの被害を受け、蜜ばかりでなく花粉や蜜蝋までもが盗まれてゆく。弱い者にはよってたかって悲劇が襲い掛かり滅びていく厳しい現実があるのだ。やがてこの群れは栄養失調に陥り全てにおいて抵抗力が無くなり、病気や天敵の巣虫、ダニの被害に遭遇する。こうした状況になる前にいち早く餌となる蜜を与えなければならないし、巣門(蜂の出入り口)はできるだけ狭くして他群の蜂が容易に入れないようにする。
こうなった場合に通常最も簡単な方法として砂糖水を与えるのであるが、私のところはこれをやらない。砂糖はじめ人工の餌は、経験上ミツバチにとって様々な負の影響があることを知っているからだ。マヌカ花蜜の流蜜期以外に採れた雑蜜(百科蜜)を其々の巣箱番号を記入して保管しておき、花蜜の不足する時は餌として同じ巣箱の蜜を与える。これは他の巣箱のものを流用すると伝染病感染のリスクがあるからだ。
私のところではマヌカの流蜜期が始まると、同時にそれまで採ってきた雑蜜のフレームを全て取り払い新しいものに取り換える。これはマヌカ蜜の純度を高めるためであるが、通常こちらの養蜂家はそこまでは徹底しないのでマヌカ蜜に雑蜜が混合されてしまう。従って活性度や純度、品質の高いマヌカハニーを世に出すことは、これらを徹底しない限り決して成就できない。前にも話したが養蜂の仕事は日頃、常に様々な管理をしっかりやってこそ成り立つのだ。

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