ミツバチの分蜂

2017.10.17

色んな花が咲き出し、春らしい日々となってきた。ちょっと前まで静かだったミツバチたちは、急に活性が出てきて巣箱周辺を飛び交う数が急増してきている。
帰巣して来る働き蜂は、足に大きな花粉団子を付けて戻ってくる。ミツバチを虫眼鏡で見てみると、全身が無数の毛でおおわれている。花蜜を採りに訪花するが、このときに身体に花粉が付着する。これを前脚で器用に取り除き、両後ろ足にある花粉バスケットと呼ばれる袋に詰め込む。花蜜は蜜胃と呼ばれる部位にため込んで帰巣して来る。セイヨウミツバチの行動半径は、巣箱中心に2キロメートル程度だが、最長でこの距離から持ち帰るのだから大変なエネルギー消費となる。これが時速30キロ近いスピードで移動でき、しかも小さな身体なので、近くでは目に止まらないほどの早さだ。これは全て、花蜜中のグリコースがエネルギー源となる。
遠方から帰巣した働き蜂は巣箱直前で力尽き、巣門までよじ登ってくるものまでいる。しかし行動半径が2キロといっても、全部がそんなに遠くまで行って蜜や花粉、プロポリスを持ってくるのではなく、巣箱に近い所を優先するのは当然である。
こうして流蜜期になると巣箱内の貯蔵物が一杯となり、女王蜂の産卵スペースが無くなってくると巣別れとなり、これを ”分蜂” と呼んでいる。

現存する女王蜂は、配下の半数を引き連れて新しい住居に移動する。このとき貯蜜の半分を蜜胃に取り込み分蜂する。旧巣箱は新女王誕生で所帯を保つ。分蜂群は必ず巣箱近くの低木に、ぶら下がるように大きな蜂球を作って短時間とまる。既に新住居は分蜂前に偵察して決定している。
養蜂家がこの蜂球を見つけ、新しい巣箱を用意して蜂球を収納すれば新ファミリーが誕生して飼育できる。分蜂蜂は数万匹と凄い数だが非常に温和で、これについては全く恐れるに当たらない。蜂球のすぐ下に、巣箱や一時的に収納する段ボール等を用意して、蜂球が付いている枝を一気にゆすれば蜂球全体がドッサと箱内に落ち、この中にはまず女王蜂がいる。これで1群増えたことになるが、この新しい群れは何とか安定したファミリーとして生きるために、非常に活発的で活性力が強いので、独立群としてすぐ成長する。ただ、蜂場にはいつも管理する者がいるとは限らないので、分蜂群は時間が経つと、あらかじめ探した新居に向けて飛び立ってしまう。これを見逃すと巣箱の貯蜜と群数が半分に減ってしまうので、なるべく分蜂しないように巣箱の内検が必要で、常に巣箱内にスペースを作って快適な環境を与えなければならない。

分蜂は穏やかで気温が上昇している時によく起こる。内検を怠っていなければ、分蜂しそうな群れは新女王が育っているのですぐわかる。これらの女王は処分しないと分蜂の主因となる。

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