ニュージーランドの自然・2

(前回の続き)その点では日本は国土の70%が自然林で覆われ、これは世界的にも希少で自然の美しさがある。この事は以前にもこのブログで話した通りだ。ニュージーランド政府も近年は規制が厳しく自然林の保護を強めている。私のところの養蜂場も政府の管理下にあり、自分の土地でありながら森林の伐採については政府の厳しい管理下にある。
ニュージーランドの国土の多くが牧場化したのはミツバチの働きによる。開拓時代のイギリス人は、牧畜をするために原始林を切り倒して牧草の種を本国から持ち込み播種するのが一番手っ取り早かった。つまり衣食住を簡単に得ることができるのである。羊を飼い、その毛皮・羊肉・そして伐採した樹木で衣食住が成り立つ。私は草刈機の代用として羊を家で飼っているが、こんなに手のかからない生き物は他にはいないと思う。ただし牧草があればの話である。
ニュージーランドは太古の時代に海底へと沈み、全ての動植物が全滅し後に浮上した島であるから、鳥類以外はこの島には渡ってこられない。勿論、花粉媒介昆虫もいなかった。入植者のイギリス人は牧草の種子を毎年イギリス本国から持ち込まねばならず、その播種も大変な労働であった。そして進化論で有名な時のダーウィンの提言でミツバチを持ち込むことによりこの問題は解決した。またこれがニュージーランド養蜂の曙でもあった。今はマヌカハニーが世界的に知られつつあるが、農業国として牧畜や果樹などが成り立つようになったのは、ミツバチによる花粉媒介の賜物なのだ。
当地の年老いた養蜂家の話では「今でこそ猫も杓子もマヌカハニー、マヌカハニーと騒いでいるが、幼少時代に親からはいつも ”マヌカ樹木が生えて来たらすぐ抜き取るように” と言われていた」そうだ。これが生えたら牧場がマヌカ樹木ではびこってしまうので早いうちに抜き取ることになるのだ。
昔は巣枠(フレーム)は全て木製であったが、マヌカハニーが売れるようになって樹脂製のフレームが登場した。このハチミツを遠心分離器で離蜜するのだが、マヌカハニーは他の蜜と比べ粘度が高いので離蜜器を高速回転させないと蜜を引っ張り出すことができず、木製のフレームは中に巣房の基となる巣礎が3本の芯線に取り付けてあるだけなので、強い遠心力が加わるとフレームのワックスがダメージを受けるため、離蜜後これを空巣脾(からすひ ※貯蜜・花粉・さなぎ・幼虫・卵が入っていない空の巣)として使えない。しかし木製のフレームはやはり樹脂製のものにはない自然界にマッチしたものがあり、私のところではできるだけ木製のものを使う。特に産卵や育児用場所になる1、2階には木製巣枠を使いマヌカハニーのストック場所である3階以上は樹脂製でなければ離蜜できないので使っている。巣房の成長速度からも、蜂たちは木製の方を好むことが良く分かる。

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